ライム時代

天然の美を備えた秘境の時代は、私が期待し想像していた物とはかなり違っていた。複雑な羽毛のような氷の結晶が、空からひらひらと舞い降りて来る。なんて荘厳な眺めだろう。このまま何時間でも腰を下ろして、眺めていたいくらいだ。それにしても寒い。未だかつて経験したことがない寒さだ。それなのに、その気温の変化さえ楽しんでいる自分がいる。今まで見た他のどんな場所とも似ていないからだ。恐らく、最も奇妙なのはその静寂を乱すのは、遥か彼方のまだ見ぬ生き物の鳴き声だけなのだ。